枕詞の意味を楽しく理解したいなら 「枕詞の暗号」という本を読んでみよう
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こんにちは。
今回は、枕詞を丸暗記でなくちゃんと理解したい人にお勧めの本について書きます。
枕詞は、和歌の飾り言葉とされていてそれ自体に意味がないとされていますが、ただ丸暗記をするだけでは面白くありません。
もちろん教える側としても無味乾燥な説明にならないように心掛けますが、授業の進行上、あまり多くの説明を割けない分野なので、是非各自に本を読んで学習してもらいたいところです。
今回紹介する「枕詞の暗号」という本は、そんな学習が楽しくできて、しかも国語の一般教養も身に着くという魅力的なものです。
1 単なる飾り言葉と思われる枕詞に意味を見出そうとした本
枕詞は「よく意味が分からないけど試験に出る」言葉の代表みたいなもんです。
その謎を4人の国語識者が考察している本が、この「枕詞の暗号」。
書かれている内容は、枕詞についての私的な考察にすぎないので、ここに書かれている内容がそのまま試験の答案に使えるわけではありません。
しかし漢字の成り立ちや日本語の歴史をもとに枕詞の謎を解き明かしていくストイックな思考過程は、自分自身の国語の教養を養うのに役立ちます。
この本をはじめて読んだのは10年くらい前ですが、考察内容にマニアックな部分が多く、理解にてこずったのを覚えています。
ただ、今になって読みかえしてみると、たしかにはじめから全部を理解しようと思うとしんどいけど、楽な気持ちで拾い読みをすると結構楽しいです。
2 この本で得られるもの
「枕詞の暗号」は、全部を理解しようと思うとなかなか骨が折れるマニアックな本ですが、国語に興味がある人が読むと得るものも多いです。
僕がこの本から学んだことは
- 枕詞の意味について有機的な理解
- 漢字の成り立ちなど日本語の素養
といったところですね。
3 枕詞の有機的な理解
一般に枕詞とは以下のように説明されています。
昔の歌文、特に和歌に用いられる修辞法のひとつ。一定の語句に冠してこれを修飾し、または語調を整える言葉。※goo辞書より引用
要は、特定の言葉を修飾するための決まり文句ですね。
例えば、和歌中に「奈良」という言葉が出てきたら、その言葉を修飾するために「あをによし」ということばが冒頭につけられることがありますが、これが枕詞。
ちなみに一般的な「あをによし」の意味は、以下のようなもの。
奈良から青土(岩緑青のこと)が産出されたことから「青土よし」の意味で地名にかかる言葉として使われる。「よし」は間投助詞。
一般にはこれを知っているだけでも「国語に詳しい」とされるレベルでしょう。
仮に僕がこの言葉を説明するとしても、精々この程度しかできません。
しかしこの本の筆者たちは、エグいくらいにこの言葉の中身を掘り下げています。
参考までに「あをによし」に関する彼女らの考察を僕なりにまとめると・・
- 古代の奈良では青土なんて産出しなかったので、そもそも青土の意味があること自体疑問である
- そもそも「あをに」とは青丹と記し、色で表すと太極旗でみられる青と赤のことである。この2色は、卦の世界で知天泰を表わす大変おめでたいものなのだ(※ちなみに韓国の国旗は太極旗をモチーフにしてます)
- 奈良とは、韓国語だとナル(経)の意味であり、経とは東西をさす。そしてその方角は、九星図における青と赤の関係に重なる
- しかも奈良山は東西に横たわる丘陵地帯である。
- したがって古代の人間は、この「奈良」の地を、福福しい地として賛美する意図で「あをによし」という言葉を使ったのであろう
どこまで信じていいかわからないくらいスケールの大きい考察ですねw
しかし、これだけの物語を知めいると「あをによし」ということばに愛着がわいてきます。
つまり国語通による考察を辿ることで、枕詞の意味について有機的な理解ができるわけです。
僕はこの本を読んで以来、枕詞の説明をするときにちょっと「語れること」が増えてきました。あおによしから韓国の国旗をイメージするなんてインパクトがあって忘れられない話題です。こんな刺激が無味乾燥な丸暗記の学習を避けることに役立つんです。
また、国語を勉強する生徒の立場から見ても、この本に書かれている内容は教科書などで意味を丸暗記するより身になる教養になるはずです。
4 漢字の成り立ちなどの日本語の素養
3に通じる話ですが、この本で枕詞についての考察では、漢字などの様々な日本語についての素養を駆使しています。
読者はこれらを拾い集めて、日ごろ使っている漢字について深い理解を得ることができます。
たとえばこの本では、「あらたまの」という枕詞の「たま」について解説するとき、「現」の字について考察しています。なぜ「たま」と「現」が関係するのでしょう?
この現の字に使われる「王」の部分は、いまでこそ「おうへん」と読みますが、もともと宝石を表わす「玉」の意味なんです。だから本当は「たまへん」と呼ぶのが正しい。
これを知っていると、「王」の編を使った漢字は、男の子ではなく女の子につけることが多い理由が分かります。こういう知識は、子供の名前を付けるときに参考になりますね。
ちなみに「現」とは、宝石を磨いてその模様が見えるところからできた言葉。
今まで見えなかったものの正体が、ぱっと分かるイメージです。これを時の流れでいうと、分からなかった未来のことが分かるのが今だから「現在」という表現に繋がるわけ。
こんなふうに、漢字の起源を知ると芋づる式に熟語のイメージが鮮明になります。
今回の枕詞の暗号を読むと、そういった日本語の素養を得ることができるので、漢字や熟語について丸暗記では得られない知的興奮を味わうことができます。
5 さいごに
以上、「枕詞の暗号」について僕なりの紹介でした。
読書を通して教養を得る重要性はこのブログで何度か取り上げましたが、この本はその意味で優れた本ですね。
ただ、内容がマニアックでとりとめもないところがあるので、体系的に読解する力を養うという意味では難しいですけど。
そんなわけで、枕詞を暗記で終わらせたくない国語好きの人、そうでなくても筆者の考察に触れて日本語についてちょっと国語通を気取ってみたい人には良い本だと思います。
それでは、また。