国語の文法を勉強する意味 ~文法をバカにしすぎると「にやける」の意味を勘違いする!?~
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こんにちは。
今回は国語の文法についてのおはなしです。
五段活用とか何とか言って、活用表を呪文のように覚えさせられた経験があるのではないでしょうか。そう、「あの」文法です。
この文法という分野は、国語の中でも特に評判がよろしくない分野ですね。
僕が教えているときも文法の授業のときは生徒のくいつきが悪いです。
その理由ははっきりしてます。
つまらないから。
なぜつまらないのかというと、勉強した内容が国語の分野でどう生かされるのかが実感できないからなんだと思います。
そこで今回は、国語の文法を勉強するメリットを僕なりに挙げてみることにします。
これをきっかけに、文法が何の脈絡もない暗記科目だと思わなくなってくれると幸いです。
1 ことばを適切に分析できるので誤用が減る
文法の力がつくと、ことばを適切に分解できるようになります。
長い文章を読むときには、適切なところで区切りながら(意味段落を意識しながら)整理して読むと頭が混乱せずにすむ、というお話をしたことがあります。
文法はこの話を「言葉」のレベルに置き換えただけです。
つまり言葉を適切に分解すれば、間違った意味で理解することが防げるということ。
言葉を適切に分解するには、どんなパーツがあるのかを理解することです。
国語のパーツは、文章>文>文節>単語と分かれますね。
そして、国語の最小単位である単語の種類をまとめたものが品詞分類表です。
品詞の分類を理解すると、言葉のパーツ(この場合だと単語)を意識できます。
パーツを理解して適切に言葉をバラすことができると、言葉の誤用も防止できるんですよ。
たとえば、この言葉はどうでしょう。
にやける
この言葉自体を知らない人は、ほぼいないはずです。
しかしこの言葉をバラしてみたことがありますか?
ちょっとバラしてみましょう。
にやけ+る
このように、「にやける」とは「にやけ」という名詞に「る」をつけて動詞化したものです。よく「告る」とか「ディスる」みたいに名詞に「る」をつけて動詞化する若者言葉がありますが、このような傾向は国語の世界では珍しくないのです。
ちなみに、この「にやけ」を漢字に直すと
若気る
になります。つまりこの「け」は「気」のことなんですね。いまでも「茶目っ気」とか「気配」という使い方をしますので、イメージは湧くと思います。
若気(にやけ)とは、男が着飾って媚びを売ることをいいます。さらにこの意味が進んで、男色の相手をする少年のことを指すこともあります。
さて、このようにバラしてみると「にやける」の意味がはっきり理解できます。
正解は、「男が変にめかしこんだり、色っぽいようすをしたりすること」ですね。
これに対して、巷ではこの言葉を「にやにや笑うこと」という意味と勘違いしている人が多いです。これは、「にや」という語感がついているので、笑いのイメージに引っ張られてしまうからだと思われます。
しかし言葉をばらす癖を付けていると、このように解釈すると違和感があるのです。
つまり、にやけるの「にや」が「にやにや」からくるとすると
にや+け+る
と分かれてしまいます。でもこれだと「け」が浮いてしまいます。「にやにや」という言葉から動詞を作るのに、カ行が出てくるわけがない。とすると「これは『にやにや』とは別の言葉だな」と気づくきっかけができるのです。
国語のセンスがある人は、このように適切に言葉をバラして分析することを無意識のうちにできるんです。そしてこのセンスは、文法を勉強することで鍛えることができるんですね。
もし文法を勉強しないと(あるいは大人になるにつれて意識しなくなると)、聞いたことがある言葉の部分的なイメージに引っ張られて新しい言葉の意味を間違えて覚えてしまうことが多くなるんです。「にやける」がその好例ですね。
2 文法を意識すれば漢熟語も適切に理解できる
1では単語のレベルで見てみましたが、これは漢字を使った熟語でも同じです。
このような漢熟語は、漢字ごとの関係性を考えてバラす訓練をすると勉強になります。
就職活動でSPIを受けたことがある人は、こんな問題を見たことがあるのではないでしょうか。
次の熟語の成り立ち方としてあてはまるものを選びなさい。
入念
① 似た意味を持つ漢字を重ねる
② 前の漢字が後の漢字を修飾する
③ 動詞の後に目的語を置く
ちなみに答えは、③です。
漢文で習った書き下し文でいうと、レ点を入れたうえで「念(ヲ)入(レル)」とよみますから、動詞と目的語の組み合わせの言葉だとわかります。
このように、漢文は漢熟語の理解に大変役に立つんですね。
これだけだと単なる試験勉強の知識だと思うかもしれません。
しかしせっかく試験で培った思考なんですから、この考えをもう少し活用してみましょう。
例えばこの言葉の意味は何でしょうか?
破天荒
上記のSPIの考えを活用しましょう。
これも「入念」と同様、動詞の後に目的語を置くパターンの熟語ですね。
つまり
破(ル)+天荒(ヲ)
と、バラすことができます。
「天荒」という意味はよくわからずとも、何かを破る意味なんだな、という意味がイメージできます。ここからは悪いイメージは湧いてこないはずです。
ところが、バラし方を間違えると、「破」とか「荒」といった粗暴でマイナスのイメージをもつ部分的な文字に引っ張られてしまいます。
そしてこの熟語を「乱暴で型破りな様子」みたいな意味だと思ってしまうわけです。
一方、言葉を正確にバラすと「天荒」の塊で理解しますので、そもそもこの熟語のイメージが違うのです。
ちなみに、この天荒というのは、古代中国の地名「荊州」のことを指します。この地は役人登用試験である科挙の合格者が一人もいないことから、未開の地であることを表すために「天荒」とよばれていたわけです。
そんな「天荒」の地から科挙試験を合格したものが現れたので、未開の地というジンクスを打ち破ったということで「破天荒」という言葉が生まれました。
したがって破天荒という言葉は、
皆が成し遂げなかったことをすること。前人未到のことをすること。
という意味が正しいのです。
このように、漢熟語も適切にバラすことができると、個々の漢字の意味に引っ張られて言葉の意味を勘違いすることがなくなります。
3 まとめ
このように文法を勉強することで、言葉のパーツを適切にバラして分析することができます。
そうすると言葉の構造を理解することができますから、単にその言葉の意味を暗記するよりも、より正確に意味を知ることができるわけです。
「文法なんて丸暗記だから嫌いだ」と、はね除けてばかりいると、言葉の構造が分からずに、かえって丸暗記する機会が多くなってしまうおそれがあるんですよ。
そんなことを考えれば、つまらないとされる国語の文法も、すこしは「やりがい」が出てくるのではないでしょうか。
それでは、また。