こくごな生活

国語や法律のソフトな考察を中心とした日常雑記録

長い文章および難解な文章が読めない人へ

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こんにちは。

 

今回は、長文読解の中でも長い文章、および難解な文章の取り組み方についてお話します。

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この種の文章は小説よりも論説文に多く、とりわけ生徒が苦手としているものです。私が塾講師をしていたときも、こういう文章を扱う読解問題があると、それだけで戦意喪失してしまう子供が多かったように思います。

 

しかし、この苦手意識の原因は、大抵2つの原因に集約されます。

それは、意味段落の意識と接続詞の意識の欠如です。以下それぞれ検討してみましょう。

 

 

1 意味段落の意識

文頭の一文字目が下がっている文の固まりを形式段落と呼び、その形式段落を意味ごとに整理したものが意味段落です。意味段落は形式段落と違い、パッと見ただけで分かるものではありませんが、これを意識することは読解において極めて重要です。

 

意味段落を意識するとは、形式段落ごとの関係を踏まえるということです。例えば集団主義個人主義に関する比較文化論が出題された場合、最初の形式段落では日本は集団主義だといっている、2,3段落はその例を言っている、そして4段落目からは話題が変わって、欧米では個人主義であるといっている・・・といったように捉えるわけです。

 

そうすると、第1段落セミイコール2・3段落でひと固まり、そして4段落の間では文章の流れがいったん変わる、という具合に文章の大まかな流れが掴めるんですね。

 

一見なんてことない作業ですが、これを意識して読み進めていけば、長い文章でも途中で頭がこんがらがらなくなります。仮に途中でよくわからなくなっても、ストーリーの切れ目がどこにあったのかを意識していれば、どこから読みかえればいいかわかるので、やはり混乱は防止できるのです。

 

以前に、文章は単なる活字の羅列ではない、ちょうど歌にAメロ、Bメロ、そしてサビという流れがあるように、文章にも塊ごとの流れがあるのだ、と述べたことがあります。 

 

bigwestern.hatenablog.com

 

意味段落を意識するとはまさにこのことです。逆に言うと、意味段落を意識しなければ、文字の羅列を手あたり次第頭の中に詰め込むことになるため、長い文章になると途中で混乱し、正しい読解が破たんしてしまうのです。f:id:bigwestern:20180203164203j:plain

ちなみに図にするとこんなイメージでしょうか。稚拙な図なのでわかりづらくて恐縮ですが、意味段落を意識しないと文章が文字の羅列に見え、逆に意識するとブロックごとの構造を意識すれば足りるため、すっきり文章を読み進めることができるのです。

 

ちなみに、図の例でいうと、第1段落と第2段落は反対のことを言っているため、大きく流れが切れます。読解のときには切れ目の線でも書き込んでおくといいでしょう。そして第2段落と第3段落は同趣旨のことを合わせていっているのでワンセットにしておく、ということです。こうすると文章が図式的に見えてきませんか?

 

2 接続詞の意識

接続詞の理解は読解問題のみならず国語全般で極めて重要です。ただ、ここでは文章読解の場面に絞って接続詞の意識の仕方を検討していきましょう。

 

難解な文章を読むうえでヒントになる接続詞は「言い換え」及び「例示」です。「つまり」「すなわち」「例えば」などがこれにあたりますね。

この言い換えの表現を意識すれば文章をスムーズに読むことができます。試しに文章①を見てみましょう。

 

(文章⓵)

 僕は、翌朝になると近所の市場に出かけた。するとたくさんの果物が並んでいる。例えばリンゴ、ブドウ、バナナ、なし、カキ、イチゴ・・日本では珍しいドリアンまである。こんな品ぞろえの豊富な市場ははじめてだ。

 とても興味深く思い、市場の人に話を聞いてみた・・・(以下略)

 

さて、この文章を読んだとき、2行目の「リンゴ、ブドウ、…ドリアン」の箇所で読むスピードが上がりませんでしたか?これは「例えば」という言葉により、2行目からは果物の名前が並んでいる、と頭の中で予測しながら読めているからです。このように、「言い換え」・「例示」の言葉を意識すると、文章を読むエネルギーをコントロールして省エネで読むことができるのです

 

また、「言い換え」「例示」には別の機能もあります。文章②をみてみましょう。

 

(文章②)

 世の中には様々な瑕疵物件が存在し、賃借人が訴訟を起こすことも少なくない。このような場合、弁護士としては瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求をすることがあるが、実際に十分な金額が取れるとは限らないのだ。

 先日も、依頼人が「こんな欠陥のある建物だったなんて知りませんでしたよ。」と私の事務所で嘆いていた。しかし依頼人はその欠陥を知ってから随分時がたち・・・(以下略)

 

さて、いきなり「瑕疵物件」物件と出てきました。中学生でこれを知っている人は珍しいのではないでしょうか。ではこの文章が読めないかというとそんなことはありません。

 

第2段落は、第1段落の具体例であり、接続詞でいうと「例えば」が省略されています。そして第2段落を見ると、「欠陥のある建物」とあります。第1段落と第2段落は「例示」つまりイコールの関係ですから、第一段落でいう「瑕疵物件」と、この「欠陥のある建物」はほぼ同じ意味だと分かります。このように、「言い換え」「例示」には難解な語句を読み解く手がかりを与えてくれるものなのです。つまり、接続詞を意識することで第1段落と第2段落がイコールだと構造的に意識でき、難しい文章も挫折することなく読むことが可能になるということなのです。

 

ちなみに、作問者の立場からすると、「瑕疵」という言葉に傍線を引いて、「この言葉の意味を本文中の言葉を使って10文字以内で説明しなさい。」という問題を出題し得ます。難解な言葉の言い換え表現を見つける能力を見ることで、その生徒が難解な文章にもへこたれない思考力があるかと試すためです

 

以上、長い文章および難解な文章が読めない人への対策のためには意味段落と接続詞が大事だということをお話しました。もちろんこれだけが対策のすべてではありませんが、今後の読解の何らかのヒントになってくれれば幸いです。

 

 それでは、また。

 

 

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