こくごな生活

国語講師だったひとのつぶやき集

国語の長文読解の勉強方法を構造的に考えてみる

国語の長文読解が苦手という人も多いのではないでしょうか。

長文読解は、国語の要になる分野ですから、これが苦手という人は国語そのものにあまりいい印象を持てないかもしれませんね。

 

そんな生徒にはどのような対策が必要でしょう。

よく「本を読め」とか「問題演習をしろ」とか言われるかもしれませんが、それはアドバイスとしてはややラフだと思っています(ちなみに読書と読解の違いについては別記事で述べていますので参考にしてみてください)。

 

もちろん本を読んだり問題演習をしたりすることは大変有益なことです。しかしより重要なのは、それによって、その人は国語の何の力を上げたいのか、という目的・効果を明確にしなくてはいけないことです

 

もし子供が病気なったとき、ただ「栄養のあるものを食べさせよう」ではなく、病気の内容・原因を知り、それにあった食べ物を考えますよね(風邪気味のときはビタミンを大目に摂らせよう、といったように)。それと同じく、国語の長文読解の場合も、その子が長文読解の何がどの程度苦手かをしっかり把握し、それに対応した方法を考えなくてはなりません。ところが、残念ながら学習塾の授業等を漫然と受けているだけでは、この点の分析は極めてあいまいになりがちです(よほど面倒見がよく緻密な授業をしてくれる先生がいれば別ですが・・)。

 

そこで今回は、一般の生徒が長文読解の苦手となるポイントを洗い出し、それに沿った学習法を検討していきましょう。

 

 以下の図は、読解問題の勉強についての私なりの見取り図のようなものです。指導者によって微妙に異論・反論があるかもしれませんが、対策を練るための頭の整理には役に立つかもしれないので、挙げておきます。

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A.そもそも活字が嫌い ⇒ 活字への親しみを養う(趣味などで活字に触れる)

    ↓                  ↖場合によっては良い影響

B. 「活字が読める」から「読解力強化」へ ⇒ 読解問題による訓練

    ↓                            ↙↗相互に関連                     

C.読書による素養・語彙力の充実  入試に役立つ分野の)本を読んでみる

    ↓

E.受験テクニックの強化 ⇒ 過去問演習

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このA~Eの項目は、一応段階別になっていますが、必ずしも順番通りに行う必要はありません。例えば、「活字が嫌いな生徒は読解問題に手を付けるのはまだ早い」とか、「読解問題が完璧になってからでないと読書をしてはいけない」という意味ではありません。それぞれ同時並行的に進めていく必要があります

 

では、それぞれの項目を検討していきましょう。

 

◯Aについて

まず、Aのそもそも活字が嫌いというのを直したいのであれば、やはり活字に親しむ習慣を日頃からつけるべきです。とはいえ、いきなり入試の役に立ちそうな本を渡して「国語の力を付けるために読みなさい」といわれても、あまり効果はないでしょうね。こういう生徒さんは、そもそも活字を読む習慣がついていないので、本に書かれている長い文章の内容を咀嚼することができず、(言われたからといって無理矢理)本を読んだとしても面白くないのです。面白くないものを読んでも頭に入るわけではありませんから、結局、数ページで挫折して本はお蔵入り、なんてことになってしまうのです。

 

もちろん読ませる側は、子供が本の面白さを理解して、そこから文章が好きになって、国語の勉強に身が入る、なんてストーリーを期待するのかもしれませんが、それはもともと国語が好きな(少なくとも嫌いではない)人間にしか通用しない話です。そもそも入試に出てくるような論説文を面白いと思っている大人がどれだけいるでしょうか?大人ですら怪しいのに、ただ子供に本を読んで国語力を付けなさいといっても説得力はないと思います。

 

そこで、もう少しハードルを下げて、本格的な本に限らずに活字に触れるチャンスを少しずつ増やしていくというのはどうでしょう。

 

極端な話、SNSのチャットだって「活字」です。それはいくら何でも・・というなら、こういうブログだって「活字」なんです。好きな芸能人のブログなどはチェックする子供は割と多いと思います。そうでなくても自分の趣味の雑誌等なら抵抗なく読めるという子も多いのではないでしょうか。

 

つまり、活字を追うという作業は、どんなに国語が嫌いな人でも一定程度日常的に行っていることで、決して勉強ができる人間の特権的な趣味ではないのです。そうだとすると、いきなり本格的な本を読ませるよりも、その子が日頃触れている活字のレベルを少しずつ上げていく習慣をつける方が、国語に対する拒否反応を抑える現実的な方法になるということです。

 

例えば、チャットや漫画などの単発的な表現からブログや趣味の雑誌などのある程度まとまった文章へ、そして(その子の興味のありそうな)とっつきやすい本へ・・というふうに、だんだんレベルを上げていくのです。ちなみに、この場合の活字の内容自体は試験勉強に役に立たなくてもいいのですあくまで活字の拒絶反応を直すために行っていることなんですから、ここで「試験に役立たせたい」と欲張ってはいけません

 

ちなみに、私が中学生のころは、活字にそれほど拒絶反応はありませんでしたが、それほど読書の習慣がありませんでした。それでも少し活字に慣れておこうか、と思って手にした本が赤川次郎の「勝手にしゃべる女」です。

 

勝手にしゃべる女 (角川文庫)

勝手にしゃべる女 (角川文庫)

 

 

 

サラリーマンを題材にした作品が多く、決して中学生向けの本ではありませんでしたが、ボリュームが控えめな短編集であること、赤川次郎の文章が平易であることから、とっつきやすい本でした。今でもこの本を覚えているということは、きっと子供ながらに心の琴線に触れたのでしょう。活字に親しむとはこういうことです。それぞれのレベルに合わせて活字に触れる機会を少しずつ上げていってみましょう。

 

◯Bについて

活字に触れていくと、「やっぱり長い文章になると分からなくなる」とか「もう少し読む精度を上げたい」といった要求や不満が出てくると思います。そこで、一定の長さの文章を切り出して、その文章を構造的に正しく読む訓練をしよう、という発想が出てきます。これが「文章読解」です。

 

文章読解の訓練は、巷の学習塾でも行われていますし、問題集もたくさん市販されていますので、学習ツールに困ることはあまりないでしょう。もっとも具体的にどの問題集を使ったらいいかという問題はありますが、それは追々検討しようと思います。

 

この段階では、問題文に出てくる文章を通じて、文章を(勝手気ままにではなく)構造的に論理的に読み進める訓練をします。そのためには、意味段落・形式段落による内容の整理、接続詞による文章の流れの把握、指示語の的確な理解、などをある程度意識的に訓練していく必要があります。したがって、読解の勉強をしているときには、ただ活字を追っているというだけで国語の勉強をした気になってはいけません。それはAの段階の話であり、読解の目的とは異なるからです。

 

もっとも、良質な読解演習をすれば、まとまった文章を読むコツが分かって、活字への拒絶感がなくなることも考えられますから、BはAに一定程度の良い影響を与える可能性はあります。その意味で両者は無関係ではないのです。

 

◯Cについて

読解問題で一定の長さの文章と向き合う作法のようなものを掴んだら、一冊の本も割と混乱なく読めるはずです。また、本を読むと論説文のテーマに使われる社会科学論などの素養が身に着くので、長文読解がよりスムーズにできるようになります。その意味で、読書は読解演習と同時並行的に行うことが望ましいです(なぜ「望ましい」という表現を使ったのかというと、私自身、中学時代にあまり読書をすることがなかったからです・・)。

 

また、一冊の本を読み進めていくと、途中で突っかかるというか読みにくい箇所が出てくると思います。そういうときに読解問題で学んだことを思い出すのです。例えば、この言葉は難しくてよくわからないけど、次の段落のこの部分に言い換え表現があるから、大体こんな意味だろうな、といった具合に、勉強したことを生かしてみるのです。そうやって一つの本を読みこなせば、達成感が湧き読解演習にも身が入る・・とやや理想論にすぎるかもしれませんが、読解問題の勉強の仕組みはそういうことなのです。

 

ちなみに、これも私が中学時代に読んだ本があります。「カレーライスと日本人」(森枝卓士著)です。いわゆる食文化に関する本で、日本人がカレーをどのように食卓に取り込んできたのかを論じたものです。多くの子供が好きなカレーを題材にした本なので、中学生でもとっつきやすい本だと思います。

 

カレーライスと日本人 (講談社現代新書)

カレーライスと日本人 (講談社現代新書)

 

 

 

◯Eについて

いわゆる受験テクニックです。読解問題は文章が正確に読めることが前提ですから、B及びCレベルの勉強を疎かにしていきなり小手先のテクニックに走るのは感心しませんが、テクニック不足で志望校に受からなかったというのは悲しすぎますから、やはり一定の対策をするべきです。

 

受験テクニックといっても、長文読解一般に関するものから志望校特有のものまであります。前者が選択肢の吟味の仕方などであり、後者が時間配分などですね。

 

前者の勉強は市販の長文読解問題集は学習塾の演習をすればよいでしょう。このブログでもこの点は掘り下げていくつもりです。後者の勉強ツールはやはり過去問です。過去問は実践勉強のツールですから、入試直前期には決められた時間にすべてを解ききる訓練をしてください(できれば、週末などの空いている時間に本試験の時間と全く同じ時間で解くのが理想です)。特定の設問だけつまみ食い的に解く、というのも場合によってはあるかもしれませんが、それだけだと時間配分などの実践感覚が身に着きません。

 

 

以上、国語の文章読解の勉強を概観してきました。

繰り返しますが、ただ漫然と本を読んだり問題集を解くのではなく自分はどのレベルの勉強をしているのかを意識することを忘れないことが大事ですね。