こくごな生活

国語や法律のソフトな考察を中心とした日常雑記録

読書と読解の違い

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「国語の力を付けるには本を読みなさい」

国語の先生からこんなことを言われることはないでしょうか?

 

僕は、このアドバイスについて、(間違いではないけれど)ちょっと誤解を招くかな、と思っています。

 

少なくとも僕が子供のころ、本を読んだおかげで国語の成績が上がった、と実感したことはありません。中には、読書をして好きな本に出会ったおかげで国語が好きになったという人もいるかもしれませんが、多分少数派でしょう。

その人は、「その本」が好きになっただけで、そこから国語が好きになったり得意になったりするまでには、まだ距離があるからです。

 

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もちろん読書が大事であることは否定しません。

様々な人の考えを吸収して、知識や物事を考える視点を増やしたり、それによって人生の楽しみが増えたりと、有益なことが非常に多いことは言うまでもないでしょう。そういった国語の素養を身に着けるという意味では、僕も読書を勧めます。

 

しかし、国語の科目で生徒が悩んでいるのは、そもそも読書を楽しめるところまでいかない、つまり長い文章を向き合うコツを知らないという場合が多いのではないでしょうか。

 

国語の成績を上げるために適当な本を手に取ってみたところで、書いてある内容はつまらないし、何とか頑張って内容を理解したところで、そんな作業が何百ページも続くことを考えるとうんざり・・。

こんな途方もないことをするくらいなら数学や英語をやる方がマシでしょ、といわれても不思議ではありません。物語を楽しむだけならゲームや漫画でもできるし、必要な情報などネットでいくらでも入手できますからね。

 

生徒の立場からすると、とにかく国語という教科ができるようになりたい、点数を上げたいという思いの方が強いはずです。しかも入試までは限られた期間しかないので、本を読んで思考力を鍛える、などという抽象的で効果があるかも怪しいアドバイスは、あまり心に響かないのではないでしょうか(注:もちろん僕は、読書も広い意味では試験に役に立つと思っています。しかし、試験対策という意味ではあまりに方法が漠然としすぎだと思うのです)。

  

僕は、国語という科目を得意にするというだけならば文章読解に特化した勉強が必要だと思っています。そして、文章読解力を上げる方法は、基本的には国語の読解問題を解くことで足りると考えます

 

「そんな、受験問題だけで国語の力を上げようをするなんて安直な!国語の世界はもっと広くて味わい深いもので・・云々」という批判が聞こえてきそうですが、当面はそれでもいいのです。

 

なぜか。

そもそも読書と読解は、目的が違うからです。

 

読書は、いってしまえば、読んでいて楽しければいいのです。書かれていることをどう解釈しても基本的には自由ですし、つまらないところはいい加減に読んでしまっても構わない。

 

しかし、読解は違います。

書かれていることを「的確に」理解しなくてはいけません。そのためにはいい加減な読み飛ばしや、自分勝手な解釈は通用しないのです。的確に理解するためには、文章の内容を段落ごとに整理して読み進める、指示語を的確に理解する、などという訓練をしなければならず、そのツールとしては、国語の読解問題が最適なのです。

 

このように、目的の違いをわきまえないまま漫然と読書をしてもうまくいきません。ただ、誤解してはいけないのは、読書が読解に役に立たないといっているわけではありません正しい読解訓練と同時並行的に読書をすれば、相互に良い関係をもたらしてくれるので、読書に抵抗がないならばむしろ積極的に行うべきです。

 

読解ができるようになると、長い文章を読み進めても頭が混乱しなくなってきます。そうすると書かれている内容から得られるものも多くなり、文章を読むことが楽しくなってきます。こうなればしめたものです。自分から本を読んで、つまり「読書」をして、本から様々なことを吸収できるでしょう。

 

そうして吸収した国語的素養は、間接的に読解に役に立ちます。本文で難解な表現があっても、「要は、この前本で読んだあのテーマのことを言ってるんだな。」といったように、読書で得た知識の引き出しを使って読み解くことが可能だからです。

 

しかし、そういう読書の効果は、読解の正しい訓練をしていることが前提の話だというのは先ほど述べたとおりです。その意味で、読解そのものがわかっていない生徒にいきなり読書をしろというのはやや酷ではないかと思うのです。

 

僕から国語が苦手な生徒にアドバイスするなら、

「読解問題をしっかり勉強して、読書が楽しめるような人間になろう。読解問題の勉強の仕方は自分が教えるから。」

ですかね。

少なくとも僕は、そのように教育を受けて国語が好きになった一人です。

 

 ちなみに、今回の僕の意見に関して、「国語の長文読解演習など不要」という意見の先生もいるようですが、それに対する僕の考えは以下の記事をご覧ください。

 

bigwestern.hatenablog.com

 

 

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