平成30年度東京都立高校入試作文問題の解説
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こんにちは。
最近、東京都立高校作文入試問題に関する記事のアクセスが伸びています。
高校入試受験関係者のみなさんが、年明けになったということで、作文問題に関心を高めていることの表れかもしれません。
そんなわけで最近検討をサボっていた東京都の作文問題について取り上げてみましょう。今回は平成30年度の問題です。
東京都の作文の勉強方針については、過去に一般的な話を記事にしたことがありますので、そちらも併せて参照してみてください。
さて、本文の題材になった作品から見てみましょう。
國分功一郎の「中動態の世界」です。
中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2017/03/27
- メディア: 単行本
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國分功一朗氏は哲学者。今回の「中動態の世界」は、2017年に発表されたもので、第16回小林秀雄賞を受賞した、「その筋」の人にとっては割と有名な作品です(僕は知りませんでしたけどw)。
哲学者が書いた文章ということもあって、今回の本文は中学三年生にとってはかなり読みづらい部類だったんではないでしょうか。実際、僕も読んでいる途中で何度か突っかかりました。
ただ、こういう難しい文章だからこそ、文章を構造的にとらえて混乱しないことが必要です。それでは問題を見ていきましょう。
今回のテーマは、「自分の意志を持つこと」です。
では、筆者は自分の意志をどのようにとらえているのでしょう。このことをまとめて書いているのは、第16段落ですね。
つまり、筆者は意志とよべるには
・意識(他のものから影響を受けている)もの
・意識したものから独立したもの
の2つの条件が必要といっているのです。
これだけを見て作文を書き始めるのはちょっと危険ですね。こういう抽象的なフレースは、本文全体を眺めて具体的なイメージを掴まないと、適切な具体例が書けなかったり、内容がぼやけた作文になりがちです。
余談ですが、模擬試験の作文の解答を見ていると、本文の最終段落のキーフレーズらしきものをそのまま書き写しただけの答案が散見されます。
どこかでこういう「書き写し」を指導している塾でもあるのでしょうか?少なくとも僕は、このような書き写しだけでは、出題ポイントである「筆者の主張を的確にとらえている」とはいえないと思いますよ?
※「筆者の主張」の捉え方については、以下の記事参照
そんなただの「書き写し」にならないためにも、本文の構成をザックリ把握しておきましょう。
本文の構成は大体こんな感じ。
【第1段落~第7段落】「私が何事かをなす」ときであっても、そのすべてが意志によって決定されるのではない(他の影響を受ける)。
(例1)物思いにふける:
「これから物思いにふけよう」とするのではなく、何らかのきっかけが必要
(例2)謝罪:
ただ「謝ろう」とするよりも、申し訳ないという感情が必要
【第8段落~第10段落】 このように他の影響を受けるがこれを「受動」と呼ぶこともできない。
(例)謝罪の場合、完全に自分の意志でプロセスをコントロールできないとしても、「謝らされている」とは表現できない。
【第11段落~最終段落】 他の影響を受けるのに、受動ではなく、能動に分類されるのはなぜか
(例)「私が歩く」の場合、その原動力は「私」であり、それは周りの様々な情報からは独立した行為である。
本当にざっくりですが、上記が本文の全体像です。
これでもちょっとわかりづらいかもしれませんが、本文の例を交えて理解することで、最終段落のキーワードにイメージがもちやすくなります。
つまり例えば、謝罪の例なら
・謝罪をしようという感情は、他から影響を受けて生じるもの
・しかし謝罪そのものは、そのきっかけから独立して自分を原動力にして行うもの
ということなのです。
このようにキーワードをできるだけ具体的に理解してから解答をした方が、絶対に作文が書きやすいです。理解が具体的な方が体験も書きやすいですしね。
もしも体験が思い浮かばないなら、上記の謝罪の例を自分なりにアレンジして書いてもかまいません。解答例を挙げておきます。
(解答例)
先日、僕は些細なことで母親と喧嘩をしてしまった。その後、友人と相談をしてみると、自分にも悪いところがあることに気づくことができ、心から反省した僕は母親に謝ることで仲直りができた。
このように、自分の意志で行動したように見えるものでも、実際には他からの影響がきっかけになると思う。僕は、他から様々な影響を受けつつも、自分から行動することで、積極的な生活ができるようになりたい。
う~ん。満点答案とまではいえないかもしれませんが、こんなもんでしょう。
今回の問題では、「難しい文章のときこそ、キーセンテンスを具体的に理解する」ということがポイントですね。
それでは、また。