こくごな生活

国語や法律のソフトな考察を中心とした日常雑記録

平成29年度東京都立高校入試作文問題の解説

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前回、東京都では本文の内容を踏まえて作文を書くことが大事だと記しました。

今回は実際に平成29年度の問題でそれを実践してみましょう。

 

問題文を直接ここに添付するのは著作権法上問題があるので、以下にリンクを張っておくので必要に応じて参照してください。

 

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2015/pr150224n-mondai/27k-toi.pdf

 

さて、「食文化と歴史」について書けといわれていますね。

では食文化と歴史について筆者はどう考えているのでしょう。

 

 一般的な参考書風に説明すると、最終段落で「食生活のあり方が、歴史には直接的にも間接的にも反映されており、・・・それぞれの国の社会構造や歴史的特質を明らかにしうる可能性を秘めている」と述べているので、とりあえず「食文化とその国の歴史はすごく密接に関連しているよ」という意味合いが含まれていれば、無難な答案になると思います。時間がないときには、このくらいの考えで答案を書いても平均点以上は可能でしょう(もちろん誤字・脱字や作文用紙の誤用がないことが前提)。

 

しかし、この解法はやや危険です。

最終段落の筆者の意見らしいところを抜き出して書きさえすれば、筆者の主張をふまえた答案になるとは限らないからです。確かに、この手の問題は、筆者の主張が最終段落にあることが多いですが、中にはそうでない場合もあります(平成27年度都立入試参照)。筆者の主張が的確に集約されている箇所を見逃さないように、全体の文章の構造をざっとみたうえで、「やはり最終段落のこのフレーズを参考にして作文を書こう」と思えるのが望ましいです。

 

では、この文章の全体像を見ていきましょう。

全体の流れのまとめ方は、厳格な正解があるわけではありません。以下は私なりのまとめ方だと思ってください。

***************************************

・食生活は歴史上あまり重視されてこなかった(第1段落)

  ↓

・たしかに食生活は研究しづらい⇒そもそも生活史研究のやり方は~だから(第2~7段落

  ↓

・でも人類の歴史は食料の獲得・生産の問題と非常に関連する(第8~14段落)

  ↓

・食糧の獲得・生産と同様、調理や食事の方法も、文化の重要な構成要素である(第15段落~最後)

***************************************

一般的な参考書では、もっとしっかりとしたまとめをするでしょうが、時間内にざっとまとめるならこの程度で十分です。要は全体の構造をザックリ理解すること大事なんです。

 

今回は、食文化の話ですから、調理や食事の方法の話題ですね。したがって14段落以前はそれほど重視しなくても答案はかけます。

15段落以後で筆者が食文化と歴史のかかわりについて的確なフレーズを述べているところを探すと、やはり最終段落がよさそうですね。したがってここに書かれているフレーズを意識した答案を書けばいい、となるわけです。

 

では、最終段落のキーフレーズである「食生活のあり方が、歴史には直接的にも間接的にも反映されており、・・・それぞれの国の社会構造や歴史的特質を明らかにしうる可能性を秘めている」を意識して答案作成していきましょう。

 

ここで、フレーズをただ書き写して「筆者は・・と述べている。私もその意見に賛成だ」という書き方をする生徒さんがいますが。これだけで筆者の主張を踏まえているといえるかは、個人的に極めて疑問に思っています。

平成29年度の参考答案のように、ちゃんと自分の主張と噛みあった形で本文のフレーズを引用するなら問題はないのですが、むやみな書き写しは、「この人は表現力がないのではないか?」と思ってしまう危険があると思っています(あくまで私個人の感覚ですが)。

本文のキーフレーズは、できるだけ自分なりにかみ砕いて表現するのが望ましいと思われます。

 

参考までに、私の答案を載せておきます。これが満点答案かといわれると難しいです。でもこの答案が原因で落ちた、とはならないくらいの答案だと思っています。作文で満点をとるのは大人でも難しいので、あまりその辺はこだわらないでやってください。

ちなみにこの答案は、私が子供のころ読んだ漫画「美味しんぼ」の内容をもとに書いています。漫画でも作文のネタになると思えば、少し気が楽になるのでは?(笑)

 

(参考答案)

 僕は、あるパン屋があんパンを開発した物語を読んだことがあります。西洋の主食であるパンと、伝統的な和菓子に使われるあんを一緒にして新たな食べ物を作る過程をみて、日本が西洋文化をいかに受け入れたかを知りました。

 このように食文化はその国の歴史的特質を表すものであり、その国を知る上で大事な分野です。今後国際化が進み、他国の人と付き合いが増えると思いますが、相手国の食文化を知り、お互いわかり合える関係を築きたいです。 

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