平成30年度センター試験・国語第2問の問題文を講義風解説
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こんにちは。
前回、平成30年度センター試験・国語第1問の解説をしていきましたので、引き続き第2問の問題文を見ていきましょう。
第2問は小説ですね。
出典は井上荒野の「キュウリいろいろ」
文庫本「キャベツ炒めに捧ぐ」に掲載されている作品です。
いや~、いい話でした、これ。
どこぞの大手予備校の寸評には、老夫婦を題材にした物語なので高校生にはわかりづらかったかも、みたいにえらく突き放した言い方をしていましたが、中高年の心情を全く理解しないまま大人になるのは教育上どうかと思いますよ?しかも今のご時世、60代を老夫婦と表現したら怒られないだろうか?
ちなみに僕はこういう話が大好きです。本文を読んでいるとき、子供や夫など「人生の支えだった存在」を失っていく女性の心情が浮かんできて、ちょっと切なくなってきました。この「キャベツ炒めに捧ぐ」は、次の読書候補にしようかなと本気で思っていますよ。
しかし試験の読解ですので、感動しただけでは終われません。以下、本文の解説です。
小説は読みやすい反面、自分勝手な解釈ができてしまう点でクセモノ的存在です。選択肢を選ぶとき、独りよがりな感情や雰囲気で選ばず、しっかり本文を根拠にする姿勢が必要になってきます。
そのためにも、小説では主人公の心情や場面の移り変わりを構造的にとらえて、根拠を選ぶときに参照する箇所を間違えないことが必要です。
では、本文の主人公の心情及び場面の移り変わりを見ていきましょう。
1 1行目~33行目:キュウリの馬を作る主人公
この文章は、意味段落ごとにスペースが空いているので、今回はその区切りごとで解説していきます。まずは、自宅で主人公がキュウリの馬を作りながら亡くなった子供と夫を改装しているシーン。
全体の流れは、
①夫と子供のためにキュウリの馬を作っている主人公
↓
②まず子供を亡くしたときの思い
↓
③次に夫が亡くなったときの想い
↓
④夫の同級生のために夫のスナップ写真を探す
というシーンの移り変わりです。
特に②と③では、主人公がキュウリの馬を作る時の心情が異なるので要注意。
作問者目線でいうと、こういう心情の比較ができる部分は問題が作りやすいところです。
2 34行目~69行目:電車の移動中における夫の回想シーン
ここの流れは
①主人公が若い女性に席を譲られるシーン
↓
②夫の写真をみて生前を回想するシーン
となります。
ここも①において、今の自分が席を譲られるシーンと、三十数年前に妊婦として席を譲られるシーンの二つを対応させていますので、その区別を丁寧にすること。
そして②においては、息子を亡くしてから夫とどういう風に生きてきたのかを、写真の回想を通して語られています。時系列を意識してないと、主人公の心情を捉えそこなってしまうので要注意。
3 71行目~最後
夫の元同級生である石井さんに、夫が通っていた学校に連れていってもらったシーンですね。ここは構成上混乱するところではないと思います。ただ、校舎を訪れたときの主人公の夫に対する心情(104行目)は、本文前半に書かれているそれとは異なっているので、そこを見落とさないようにしましょう。
つまり主人公は、「あの(学校)時代の俊介に会ってみたい」という長年自分の心の中に保存されていた思いを、いま果たせたという心境になっているのです。つまりここでは、息子である草を亡くした悲しみや、夫へのわだかまりなどを感じている場面とは主人公の心情が異なっているのが分かります。
本文の大まかな構成は、以上のとおりです。
本文自体はけっこう読みやすい部類だと思いますが、小説は選択肢の吟味が結構難しい場合が多いので油断してはいけません。そんな話を次回以降の設問解説記事で見ていきましょう。
それでは、また。