こくごな生活

国語や法律のソフトな考察を中心とした日常雑記録

「作問者目線」から平成30年度センター試験国語第1問を解説してみる

スポンサーリンク

※予め断っておきますが、私はセンター試験の作問者ではありません。

 

こんにちは、ご訪問ありがとうございます。

今回は、平成30年度センター試験(国語)の第1問を設問ごとに見ていきましょう。

 本文の解説については、以下の記事を参照してください。

 

bigwestern.hatenablog.com

 

教材作成業務をしている僕が問題を見てみると、作問者の気持ちがおぼろげながらわかります。今回はそんな気持ちを想像しつつ、僕自身が解答したときの感想も交えながら解説してみたいと思います。

 

センター試験の問題文はこちら

https://www.dnc.ac.jp/sp/albums/abm.php?f=abm00033249.pdf&n=h30+kokugo.pdf

 

f:id:bigwestern:20181226111753j:plain

問1について

同音異義語の使い分けをする力が問われています。

もう漢字自体はWordで変換できる時代ですが、本問で問われている力がないと、違う意味の漢字変換をしてしまう間違いを起こしかねません。その意味で出題者側は、現代でもこういう問題は一定の教育効果があると考えているんでしょうね。

 

ちなみに各問の正解はこちら

(ア)正解は②

   意匠 :①高 ②巨 ③交 ④格 ⑤本 

(イ)正解は③

   踏み :①急 ②記 ③襲 ④器 ⑤

(ウ)正解は⑤

   乾いた:①和 ②迎 ③果 ④拓 ⑤電池  

(エ)正解は⑤ 

   摂理 :①断 ②衝 ③盗 ④辱 ⑤取   

(オ)成果は②

   洗練 :①律 ②浄 ③独 ④変 ⑤水艦 

 

問2について

作問者からいわせてもらうと、こういう問題は、設問の方向性(ベクトル)から少しずつずらして間違いの選択肢を作るもんです

そこで解答者としては

ア.設問の方向性を客観的にとらえる。

イ.選択肢の検討の際、その方向性からズレがあったり余計なものが付けたされたりしていないかをみる

という作法が大事になるわけです。そんなポイントを意識しながら選択肢を見てみましょう。

 

まずアについて。

傍線部Aの要旨は、講義が素朴に不変な実在ではないということです。そして「不変な実在」とは、傍線部の前文から、多義的で意味が定まらないというような意味であることが分かりますね。また、ここでいう「多義的」とは、同じ講義でも受講生によって「大きな~空気のふるえ」だったり、「うろつく教師のモノローグ」だったりと様々に受け取れるということです。

 

このように要旨に含まれる抽象的なキーワードは、本文の具体例や言い換えに即して具体的に理解する必要があります。自分勝手な想像で済ませると、選択肢のずれに気づきにくくなりますので要注意。

 

では、イの検討に入ります。

先ほども言った通り、傍線部の要旨は、講義の多義性であり、その方向性からずれているものは間違いということになります。

 

まず、①についてです。

受講者の目的意識が授業者の働きかけで変わっていく、というのは、前述の多義性と被るところがあるので、僕がこの選択肢を見たときは、自信をもって✖はつけられませんでした。しかし受講者の目的意識と態度の変化というのは、受講者の主観のことであり、「講義の」多義性の話とはちょっとずれるな、と思ったので、△というかんじ。

 

次に、②について。

授業の意義について解釈の多様性を述べた記述です。特に✖にする理由がないので、◯の候補として保留します。

 

③はどうでしょう。

学生の学習効果の話にテーマがずれてますね。これは比較的✖にしやすいかな。

 

④は、多義性という言葉がでてきているものの、多義性を絞り込んで初めて有益な存在になるなどと、余計なことが書かれています。有益かどうかなんてテーマは本文のどこにも書いていません。これも✖にできます。

 

⑤は人によってはちょっとわかりづらいかもしれませんが、テーマのずれを意識すれば✖にできるはず。ここでのテーマは「講義の意味は人によって様々」ということであり、「関係の移り変わり」ではありません。

 

あとは①と②を天秤にかけて、2が正解じゃないかな、という思考プロセスでしたね。

 

 

問3について

これ、間違えてしまいました。

どこで間違えたのかも記しておくので、反面教師にしてくださいw

 

生徒の会話の空欄を埋めるというちょっと珍しい問題ですが、もちろんこれも読解問題です。本文を踏まえて解答しなくてはいけない点は、他の問題と同じ。

ただ作問者の立場から言わせてもらうと、こういう問題において会話文は解答する際の誘導をする役割をしている場合がありますので、いい加減に読むのは危険です

 

空欄を見てみると、ここでは「今と異なるデザインを共有~別のバージョンを知覚する」の言い換え表現が入るということが分かります(生徒Dの最後の会話参照)。となると、本文の第10段落の内容を根拠にすればいいでしょう。第10段落以降にもデザインの変化による近くの変化について掘り下げていますが、本問を解答する上では、総論部分にあたる第10段落に記述で十分。

 

第10段落では、デザインが変わることで「世界が違って見える」、つまり「モノから見て取れるモノの扱い方の可能性」の情報が変化するといっています。この主旨からズレタ選択肢をそぎ落としていけば、正解にたどり着くわけです。

 

この視点で見ると、まず①は✖であるとわかりやすいです。

「各自の判断にまかされている」などと、扱うものが勝手にその方法を決めていいという意味ではないですね。会話文の表現を根拠にしてしまうと①を選んでしまいそうになりますが、本文を根拠にすれば間違えにくいです。

 

③も比較的✖だとわかりやすいかもしれません。

「必要性を感じる」などと、デザインの変化によって人が扱い方を変えなくてはいけないようなことまでいっていません。しかもこの選択肢は、会話文の生徒Aの第2発言と矛盾します。

 

④は、デザインではなく人の「立場」に着目しているところが✖。

 

さて、残るは②と⑤ですが、正解は⑤ですね。僕は②にしてしまいました。

②は「無数の扱い方」というのが変ですね。デザインが変わって生まれるのはそれに対応した異なる扱い方だけであって、扱い方が無数に生まれるわけではありません。僕は、生徒の会話から「扱い方は一つではない」という方向に引っ張られ、本文の趣旨とのずれを検討することが雑になってしまったようですね。反省してます。

 

問4について

傍線部Cの「このこと」とは、前文の「人間が『デザインした現実』を知覚し、生きてきた」ということです。そしてそのデザインした現実は価値中立的なものではなく、自分たちのために「あつらえたもの」であることが同段落から分かります。この主旨と選択肢とのずれを見ていきましょう。

 

まず①は、現実を「これから加工すべき状態」と捉えているのが✖。

むしろこのような現実の中では人間は生きていない、と本文でいっていますね。

 

②は自然の形状の変化に人間が合わせているという話になってしまってます。デザインした現実は、人間に適合するように「あつらえる」ものですから、上記の主旨とは真逆です。

 

③は特に誤りのポイントが見つからないので、保留しておきます。

 

④は、現実が価値中立的ではないという点はいいですが、環境をあつらえた集団が「特定」の範囲であるといっている点がずれていますね。本文では改変主体は特定に限定されるなんて一言も言っていません。僕がこの選択肢を見たときには、「限りなく✖に近い△」扱いにしました。

 

⑤はすこし迷いましたが、デザインを人工物を次々に生む創作ととらえている点が引っかかりましたね。このようにデザインを「一から生み出す」ものととらえてしまっては、「身の丈に合うようにあつらえた環境」というニュアンスと違ってしまいます。僕は、やはり✖に近い△かなと思いましたね。

 

以上により、③、④、⑤の中で、最も適しているのは③というプロセスでした。

 

 

問5について

デザインされた「行為ダッシュ」については第16,17段落で説明し、心理学ダッシュと従来の心理学の関係については、第18段落以降で述べています。

心理学ダッシュとは、文化歴史的条件と不可分一体であるにもかかわらず(第19段落参照)、心理学はそのことに無自覚であるから、意識することが必要だ、というような内容がここでいわれる主旨ですね。

 

①は、概ね上記の主旨を捉えています。まだ自信をもって〇にはできませんが、有力な正解候補。

 

②は後半がよくわからない記述でした。心理学ダッシュによれば、環境は人間が文化的に改変していくものなのに、②の記述では「新たな」人工物に直面した際の人間の心理研究みたいになっちゃってます。そんな方向性の記述は本文にはないので、よくわからないけど✖っぽいですね。

 

③はかなりわかりやすい✖ですね。「記憶」と記憶ダッシュの説明が全くの創作。

 

④はちょっと難しい記述に感じました。なんとなく本文の主旨にあってそうな気もしますが、心理学ダッシュの説明がかなり怪しい。文化歴史的に人間が整備した環境を「デフォルト〔初期設定)」と形容しているのはおかしいです。デフォルトなのはむしろ従来の心理学が想定している(ダッシュでない)環境を表す表現のはずです

僕が問題を解いているときは、そんな思考プロセスから「④は✖に近い△」と判断しました。

 

⑤は、従来の心理学に関する記述からして誤り。

「行為」と「行為ダッシュ」の結果が同じなら一緒に考えてしまえ、なんて説明は本文のどこにも書いてありません。

 

そんなわけで、①、②、及び④を天秤にかけて、②が残るという判断になりました。

特に④が正解と迷う問題でしたね。

 

 

問6について

まず(ⅰ)は表現技法の問題です。乱暴に言ってしまえば、本文をそれほど良く読めていなくても解ける問題ですから、文章がよくわからなかった人もこういう問題はあきらめてはいけません。

正解は④ですね。「~、私たちは繰り返してきたのだ。」という記述は客観的事実を言っているのであり、筆者の主張を読者に巻き込むような記述ではありません。

 

逆に、(ⅱ)は本文が読めているかどうかが試される問題です。

本文の全体的なまとめは、上記に挙げた過去記事を参考にしてください。

 

まず、①についてですが、本文はこのように具体例と抽象論をきれいに分けてはいないですよね。むしろ具体例と抽象論が行ったり来たりしている文章なので、✖の記述となります。

 

②は、ちょっと迷いました。しかし、本文にあるそれぞれの具体例を一気に一般化して抽象的にまとめたような表現が見当たりませんでしたので、✖っぽいなと感じましたね。

 

③は①と似たような理由で✖です。

本文は、具体例と展開部、結論部などという構成ではなく、結構具体例を交えつつ少しずつ論を進めているような文章ですね。

 

よって残った④が正解となります。

 

 

以上、設問1を僕なりに解説してみました。一般の参考書のような洗練された説明ではないかもしれませんが、その分、実際に解いた後の感想も交えてライブ感をもった思考プロセスをお届けできるようしたつもりです。

 

次回以降、設問2の小説についても解説記事を書ければと思っています。

 

それでは、また。

 

 

プライバシーポリシーについて

スポンサーリンク