こくごな生活

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東京都立高校入試の作文問題を分析してみる(一般論)

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前回、作文問題の勉強方法について一般論を述べました。

早い話が、作文は独りよがりな勉強になりやすいから気を付けなさいよ、しっかり試験で要求されることを意識しながら勉強しなさいよ、ということですね。

 

では、実際に試験で何が要求されているのかを東京都立高校入試で見ていきましょう。過去問は以下のサイトから入手できます。

 

平成29年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題及び正答表:東京都教育委員会

 

ちなみに、以下の記事も前回と同様、私が以前作成したものですのでご了承ください。

なお、記事中で紹介されている作文問題の部分点の基準は、平成27年度に公開されたものをもとにしています。現在は、各学校で部分点の基準を設けているようですが、個人的にはそれほど大きく変わっていないだろうと思われるので、そのまま記載しておきます。

 

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東京都の入試では、毎年200字以下の作文問題が出題されています。

出題の仕方はほぼ決まっており、問題文は「国語の授業でこの文章を読んだ後『~』というテーマ自分の意見を発表することになった。このときにあなたが話す言葉を具体的な体験や見聞を含めて二百字以内でかけ。なお、書き出しや改行の際の空欄、、や。や「などもそれぞれ字数に数えよ。」(下線部は当サイトで加筆)という形です。

この問題文、流し読みしてはいけませんよ。出題者が「こういう作文を評価するよ」というメッセージなんですから
実際に試験会場で問題文をじっくり時間をかけて読む余裕はありません。今のうちに、問題文からどういう作文が求められているか把握して、その要求にこたえられるように訓練するのです。過去問を勉強する意味はここにあります。本試験会場時間がない自分自身を救うために、今自分が準備しておくというイメージです。

具体的に見ていきましょう。

①「この文章を読んだ後」
これは、この文章の内容を踏まえて作文を書きなさいよ、というメッセージです文章の内容を踏まえない勝手気ままな内容の作文には点数を与えないぞということです。東京都が公開している作文採点基準でも、筆者の主張を踏まえていない作文は3点減点していることがわかります

文章の内容を踏まえた作文を書くためには、当たり前ですが文章を正確に読解してなくてはいけません。作文を通して文章力と読解力の両方を試すことができるという意味では、東京都はなかなかしゃれた問題を出しますね(解く側からすると面倒でしょうが(笑))。

正確に読解といっても、文章のすべてを完全・完璧に理解しなさいという意味ではありません。そんなこと私にだって難しいです。決められた時間内に問題を解かなくてはいけない生徒さんなら尚更です。
そうではなく、文章を段落ごとに整理して読み、大まかな構造を整理し、作文問題を解くときに参照すべき個所を正確に把握できるようにすることが大事なのです。

これだけではちょっと難しいですね。もう少し説明しましょう。
国語の問題を解くときには、一度問題文を読みますよね。そのときに頭からだらだら読み進めるのではなく、段落ごとに整理しながら読む習慣をつけるのです。

文章読解でやりがちな悪い読解例として、なんとなく気のおもむくままに読んでいくことが挙げられます。
でも各段落の関係性や構造を整理しないまま読むと、読んでいく途中で頭がこんがらがってきます。そんな状態で無理に文章を読み進めるとますますわからなくなる。そうこうしているうちに時間が迫ってくるので、頭が混乱したまま設問を解き始める・・こんな経験ありませんか?これでは作文だってうまく書けませんよ。

そうではなく、最初に文章を読み進めるときに、「この段落では要はこういうことを言っているな。」「次の段落は前の段落の例え話だから1セットで捉えよう。」「次の段落では話題が大きく変わるな、切れ目の線でも書き込んでおこうか。」など、段落ごとに整理することが大事なのです。

こうすれば、正確な形で問題文の内容が頭に残り、いざ作文を書くとき参照すべき(注:あくまで参照ですよ!本文の書き写しや要約にすぎない答案は0点答案です。)個所を適切に拾い上げることができます。
作文を書くとき参照すべき個所を探しやすくするためにも、文章を読む前に、あらかじめ作文問題の設問文を読んでおくことをお勧めします。そうすれば、文章をんでいるときに、「この記述の内容は作文を書くとき重要だな」と、あらかじめチェックすることができますからね。

長い文章を読むことが苦痛でない人は、この段落ごとに整理して内容を頭に叩き込むという作業が無意識にできている人です。逆にいえば、文章読解が得意でない人は、意識的に訓練する必要があるのです。

段落ごとに整理して理解するというと、人によっては難しく聞こえてしまうかもしれませんが、例えば自分の好きな歌を思い出してください。最初にAメロ、Bメロとあってサビの部分があって・・と、その歌の構造を理解していますよね?だからこそ内容が理解できるのであり、楽しめるのです。これが音符と歌詞が何百個も並んでいると思ったら、いっぺんに聴く気がなくなってしまうと思います。文章読解もそれと同じです

結局、東京都の場合、作文を書くために読解力を上げなくてなならないということです。ただ、上記の説明だけでは少し抽象的なので、具体的な説明は個々の過去問解説を参照してイメージを掴んでください。

②「~」というテーマで
生徒の作文を読んでいると、素晴らしく文章力もあり文字も正確で美しい、でも書いている内容がどうもずれているんだよなあ、と思う答案にしばしば遭遇します。

こういう作文を書く生徒さんは、実は文章を書くのが嫌いではないタイプが多いのです。しかし文章を書くのが好きなゆえに、書いているうちに熱くなってしまって、内容がテーマからズレて暴走してしまう・・という失敗をしがちなのです。残念ながら、これでは本番であまり良い評価を得られないでしょうね(おそらく採点基準の「筆者の主張を踏まえている」から外れてしまうはず)。

この失敗は、前述したように文章を構造的に理解していないことによる場合が多いです。文章の構造を正確に把握し、適切な個所を参照しながら作文を書けば、内容が暴走することはなくなります。

また、特に文章を書くのが好きな人は、作文の内容にこだわり過ぎないという点にも注意する必要があります。主張や体験の内容が個性的で珍しい必要はありません。むしろ変に背伸びをした内容を書こうとすると、書いているうちに頭がこんがらがって、テーマからズレやすい記述になる危険性が高くなります。出題者が求めているのは、皆さんの文学的センスや個性的なアイディアではなくて、テーマに忠実に論理的な文章を書く能力であることをわすれてはいけません

まあ、この説明も少し抽象的でわかりづらいかもしれませんので、具体的な問題解説も併せて参照してくださいね。過去問解説の中で、テーマからズレるってどういうことか?を具体的に説明しています。

③自分の意見・具体的な体験・見聞
作文で絶対的に必要な部分です。東京都が公開しているの作文の配点基準をみても、主張と体験・見聞にそれぞれ4点、3点の点数が割りふられています。

作文が苦手な人でも、とりあえずこの2つは(内容はともかく)落さないようにしてください。主張と体験・見聞の両方を書く姿勢さえ見せれば、内容がイマイチでも極端に低い点数になることは少ないと思います。一方、作文が得意な人も、主張の内容にこだわり過ぎて体験を書くのを忘れた、なんてことが絶対にないようにしましょう。

④200字以内であること・マス目の使い方について   
問題文では200字以内となっていますが、もちろん分量が少なすぎてはいけません。東京都の公表している採点基準によれば、100字以内、つまり半分以下だと0点になってしまいます。101字~150字でも-2点となっていますね。つまり151字は最低限書く必要があるわけです

ただ、一般に作文・記述問題は8割(この問題でいうと160字)埋める必要があるというのが国語問題の常識となっています。確かに作文添削をしているとき、8割埋まっていない作文は見た目にも物足りなく、印象があまりよくないのが正直なところです。もちろん実際に本試験で8割埋まっていない作文を減点しているかどうかは分かりませんが、安全のためにマス目の8割(160字以上)は埋めるようにしてください

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東京都の作文は、本文の内容を踏まえて書くということがポイントになりそうですね。

「本文の内容を踏まえる。」というのは、どういうことかのついては、次回、実際に問題を解きながら考えてみましょう。

 

 

 

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