実はゆうパック等の航空搭載禁止品の判断は郵便局員でも難しい
こんにちは。
最近、メルカリなどで荷物を発送することが増えています。
たとえば発送先が遠距離な場合、受取人とのトラブルを避ける意味でも、できるだけ迅速に送ることのできる航空輸送を利用したいところです。
僕が郵便局員をやっていたときも「この荷物、航空輸送できるの?」といった質問を受けることが結構ありました。
しかし航空輸送ができるかどうかというのは、実は郵便局員でも判断が難しいのです。
今回はその辺のところを僕の経験談を交えてお話したいと思います。
1 実は多くの場合、陸送とそれほど早さに違いはない
まず前提として認識しておきたいところは、航空輸送ができないからといって大幅に到着が遅れるということは原則的にほとんどないということです。
例えばゆうパックが東京から航空輸送されるエリアとして九州地方などが挙げられますが、航空輸送から陸送に振り替えても、一般に半日から1日程度の遅れで済みます。
つまり、普通に荷物を送る分には、輸送方法についてそこまで神経質になる必要はないのです。
しかしもちろん例外もあります。例えば
- 一刻も早く荷物を送りたい
- 送り先が沖縄などの離島である
といった場合は、航空輸送かどうかは結構大事なポイントになります。
とくに離島への輸送の場合、天候などの影響により船が何日もでないというときもありますので、陸送になると場合によっては1週間近く到着が遅れてしまうことがあります。
こういう場合には、荷物が航空輸送できるかについて考慮する必要がありますね。
2 航空輸送禁止品の一般的な説明
では航空便で送っていはいけないものは何でしょうか?
郵便局の公式見解を見てみましょう。
このサイトを参照すると、航空輸送禁止品の一般的な種類を見ることができます。
内容を引用すると以下のようになっていますね。
- 火薬類
- 高圧ガス
- 引火性液体
- 可燃性物質
- 酸化性物質類
- 毒薬類
- 放射性物質類
- 腐食性物質類
- (その他の)有害物質類
これだけ見てもピンとこないかもしれませんが、要は危ないもの(そう見えるもの)全般がダメと思ってもらって構いません。
一般にはリチウム電池内蔵が疑われるものは専ら陸送になってます。
カメラをはじめ家電製品やゲーム類を航空輸送するのは厳しいとみていいでしょう。
3 郵便局員も戸惑っている?
ここで郵便局内部の事情を少し記しておきましょう。
航空保安が厳しくなってからというもの、以前と比べて航空搭載禁止品のチェックが格段に厳しくなってきました。
このような郵便局の荷物検査状況は総務省も目を光らせていて、航空搭載禁止品を飛行機に載せてしまうと、場合によっては郵便局に与えている航空輸送品の荷物取扱いの許可を取り消されてしまうことも考えられます。
そのため現場が航空輸送禁止品を見逃してしまうと、現場責任者は上層部からえらく怒られます。当然その影響は、バイトをはじめとする現場スタッフも及び、ゆうパック等の荷物の検査については、皆かなり神経質になっているのが実情です。
しかし郵便局員はすべての物品について専門的な知見があるわけではありませんから、どれが航空輸送にあたるのか正確に判断できるとは限りません。
そこで何が起こるのかというと、ちょっとでもわからなかったら陸送にしてしまう、という萎縮的な判断が激増するのです。
ちょっと極端な例ですが、とある郵便局でタンブラーを陸送にしてしまったということがありました。おそらく中身のチェックをしていたスタッフが、タンブラーという存在を知らず、「正体が分からないから陸送でいいや」と安易な判断をしてしまったのでしょう。
流石にこの措置はそのスタッフの判断の誤りでしたが、それだけ現場の人間が航空輸送品の判断について神経質になっているという一つの例だと思います。
3 自分の失敗
ちなみに航空輸送禁止品の判断の難しさをイメージしてもらうために、僕自身の失敗談をお話しましょう。
当時ゆうパックの引き受けを行っていた際、品名に以下のような記載があるものを見つけました。
体温計(電池なし)
これを見た僕は「電池を抜いてある体温計ならまず大丈夫だろう」と思い、一応その場にいた社員と相談の上、航空輸送することに決めました。
ところがこのゆうパック、途中の中継局で陸送に振り替えられてしまいました。
ウチの郵便局は、航空輸送禁止品を飛行機に載せる「未遂」行為をやらかしてしまったのです。
陸送振替の理由は、「腐食性物質混入の恐れがあるから」というもの。
何のことか分からず問い合わせてみると、水銀が入っている可能性があるという回答が返ってきました。
これは迂闊でした。
電池がない体温計ということで、僕は当初、電池を抜いてあるデジタル体温計をイメージしていました。
しかし体温計といえば、昔は水銀を使用するのが当たり前でした。つまり「電池がない」というのは、電池を抜いてあるという意味ではなく、「電池をそもそも使用していない」という意味にもとれるため、旧型体温計の可能性もでてきます。
中継局はまさにその解釈により、当該荷物を陸送に振り替えたわけです。
このように大量のゆうパックの品名につき、様々な場合を想定して禁制品か否かの判断をしなくてはならないわけです。
最近では禁制品リストも整備され、判断が幾分容易になってきてますが、すべての品名を的確に判断するのはなかなか難しい。
このようなことが起こると、一見航空搭載できそうなものでも、少しでもあいまいなイメージが残るものは陸送にしようという意識が現場に広がるのも、ある意味やむを得ないのかな、と思います。
4 さいごに
以上、ゆうパック等の航空搭載禁止品の判断について少々内部事情を含めてお話をしました。航空保安の要請からその判断は次第にシビアになっていることが伝われば、と思います。
仮に品名で禁制品に当たらないように見えても、そのあとのエックス線検査ですこしでも危なそうな形がうつったらやはり航空搭載は見送りますので、飛行機に載せるハードルはさらに上がります。
空港の手荷物検査と同様、モノを飛行機に載せるというのは、大変なことなんです。
このような事情がありますので、
「危ないものが入っていないのに禁制品扱いされた」
ということも珍しくありません。
前述したように陸送でも到達の早さはそれほど変わりませんので、禁制品扱いされても気を悪くしないで頂けると、郵便局を知る者としては助かります(苦笑)。
なお、航空搭載品をゆうパックで送る際に、品名記載で留意すべき点について書いた記事もあるので、よろしければ参考にしてみてください。
それでは、また。