10年勉強しても司法試験に受からなかった奴がその難しさを語る ~知識習得編~
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こんにちは。
このブログの読者様はご存知かもしれませんが、僕は司法試験受験生でした。
結果はというと、大学在学中から受験し始めて10年たっても不合格。
流石にこれ以上続けるのは無理と考え断念。そのまま今に至っています。
今回は、なぜ僕がそれほどまでに司法試験に受からなかったのかを検証してみようと思います。
- これから司法試験を受けようと思っている人
- 「長年勉強してるのになんで受からないの?」と疑問に思っている一般人
こんな人が、この記事から司法試験の難しさの正体を少しでも分かっていただければ幸いです。
今回は司法試験の中でも知識の理解の大変さについて語っていきます。
そして次回以降で、知識を表現する論文の大変さを一般人でもわかるように述べていきたいと思います。
1 頭に入れる知識量が半端ではない
まず司法試験は、単純に求められる知識量が膨大です。
六法全書の分厚さは一般人でも知っていると思いますが、その中身を解説する教科書はその比ではありません。
たとえば民法でいうと、500ページ以上の体型書4冊分の内容を頭に入れなくてはなりません。もちろん隅から隅まで完璧にする必要はありませんが、これだけの量をちゃんと理解しようと思うと相当な時間と労力をとられます。
ちなみに六法を理解するために必要な時間は、およそ8000~10000時間といわれます。
つまり1日8~10時間の勉強を3,4年続ける必要があるわけです(しかもこれで合格できれば早い方)。
2 暗記は不要?
「知識が必要」というと、よく法学部の先生から「司法試験は暗記ではない」と返ってきますが、これを素人が鵜呑みにするのは危険です。
僕からいわせると法律の専門家は普段から法律の概念を使いこなしているので、それらを「覚えた」と認識していないだけです。
つまり「暗記ではない」とは「暗記程度の付け焼刃の知識ではなく使いこなせるレベルまで理解しないといけない」というシビアな要求をされているということ。決して「覚えなくても受かる楽な試験」という意味ではありません。
3 世間知らずの学生には理解が困難な世界が多い
「暗記ではなく理解だ」というのは受験の世界の決まり文句みたいなもので、司法試験に限ったことではないかもしれません。
しかし司法試験の場合、純粋な法律学以前に常識レベルで理解すべき世界が広い。
民事系 ⇒ 金融取引や親族トラブルなど
刑事系 ⇒ 聞いたこともない犯罪や警察活動など
これらについてそれなりのイメージがもてなくてはなりません。
当たり前ですが、こういう素養についていちいち法律の教科書で説明なんかしてくれません。常識のない学生が法律の勉強を始めようと教科書や参考書を読んでも、最初はチンプンカンプンであることが多い。
つまり純粋な法律学だけでなく、法律が実際に使われる現実について多少なりともイメージできないと教科書の理解すら困難なのです。
そこで多くの受験生は、
- 判例や時事ネタなどで教科書で使われている概念がどう使われているかイメージする
- 問題演習などで概念を使って自説を展開する練習をする
ということを同時並行で行い、教科書を2度3度(場合によってはそれ以上)読み込んでようやくその内容が分かってくるわけです。
ここで
- 事案を読んでどれだけ的確に事実をイメージできるかというセンス
- 今までの社会経験
がシビアに問われます。
つまり活字の情報をスムーズに把握できる秀才、または経験豊富な社会人が、司法試験では圧倒的に有利なわけです。
ちなみに世間知らずの凡人学生だった僕は、教科書の理解をするだけで無駄に膨大な時間をとられてしまいました。子供のころみたいに「まじめに机に向かう」というだけではなんとかなる世界ではないんですね。
4 司法試験の勉強をレベル別にみてみる
3で述べたことを、大学受験とパラレルに考えてみましょう。
司法試験の勉強は、大体以下の①~③のような過程をたどります。
①教科書で専門知識を知って記憶する
②事例を大量に知ってその知識がどういうものかを具体的にイメージする
「(ライブドア事件などをみて)新株予約権ってこういうふうに使うのか」
③そのテーマについて自分の意見を持てる
「新株予約権はこういう状況のときに行使すべきだな(すべきじゃないな)」
①のレベルは普通の学生がやる勉強です。
教科書を読んで大事なところに線を引いたり、必要なところは暗記したりする作業ですね。これくらいなら大学に行く学生なら(やろうと思えば)だれでもできます。
②のレベルは、教科書の概念を具体的にイメージして理解できるレベルですね。
このレベルにならないと、深い知識が頭に入ってこないので択一試験に受かりません。
例えば、判例や参考書、あるいは時事ネタなどを読んで「新株予約権がどんなふうに使われるのか」について理解していないと、それについての規定条文を読めません。規定条文が読めないと、択一問題で問われる細かい規定の知識も勉強できないわけ。
このレベルは難関私立大学の短答式入試に相当すると思います。
教科書で書かれている内容を詳しい参考書で理解を深めて、より細かい知識を得るという作業と似ています。
③は記憶・理解を超えて、未知の事案について自分で考えられるレベル。
そのレベルにおぼろげながら到達できると司法試験合格、しっかり到達できると実務家、という感じですね。
ちなみに③のレベルは、難関国公立大学の記述・論文試験に相当するといっていいでしょう。
学部レベルの学生は、①で十分です。
司法試験を受ける受験生は、みんな②のレベルまでは勉強します。
しかし3で述べたように、知識を定着させる能力は個人差があるので、凡人の場合は②のレベルを完成させる(司法試験でいうと択一合格)のも一苦労です。
5 本当に難しいのは論文だけど、それは次回で
以上、「司法試験では法律の知識を理解するだけでも大変」というお話でした。
しかしこのくらいのレベルなら、実は司法試験だけでなく行政書士や宅建でも同じことです。僕の場合、司法試験の択一や行政書士くらいならなんとか合格できましたので、知識の理解という意味では、ある程度司法試験の難しさを克服できたといっていいのかもしれません。
そんな僕も、4の③で挙げたレベル、つまり論文合格はついにできませんでした。
論文合格の難しさについては論文編の記事でじっくり語っていきたいと思います。
それでは、また。