作文添削者がわかりやすい文章の書き方を考える~一文が長いのは なぜいけないのか~
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こんにちは。
今回はわかりやすい文章の書き方についてです。
「文章の書き方」というテーマを偉そうに書くと、自分の文章へのブーメランになる危険があるので気がひけます。しかしこういう記事は自分への戒めにもなるので、あえてここで記しておきましょう。
僕は普段、高校入試対策の模擬試験で出題される作文を添削しています。
お陰様で、様々な都道府県の模擬試験を見ることができるのですが、そうすると作文採点基準は模擬試験によって様々であることに気づきます。語句の使い方に厳しいところだったり、内容重視だったりと、各都道府県でどういう教育方針を取っているのかが、採点基準を通して知ることができて、とても興味深く思いますね。
さて、そんな採点基準の中で一つ気になったものがあります。
「一文が長いものは減点」
このような採点項目を設定している模擬試験が、ちらほらあります。
中には「一段落に一文しかないものなら、一段落が一行だけでも容赦なく減点」というところも。かなり厳しいですね。
巷でも一文が長いのはよろしくないといわれます。みなさまの中にも、一文が長くなりすぎないように注意している方は多いのではないでしょうか。
一文が長い文章が、必ずしも文法的に間違っているわけではありません。しかし、一文が長い文章は、分かりにくい場合が多いのは確かです。
国語の作文教育は考えを的確に伝える能力を育むことですから、そのようなわかりにくい文章を防止することに一定の理由はあります。上記のような減点事由もそのような趣旨で設定されているのでしょう。
そこで今回は、一文が長い文章の「わかりにくさ」をみていくことで、わかりやすい文章とはどういうものかについて考察していきましょう。
1 こんな文を書いてませんか?
一文が長い文章を書く人は一つの文に情報を詰め込み過ぎる傾向にあります。
例えば以下のような文はどうでしょう。
「今日は桜の開花宣言が出されましたが、関東地方は全般に昨日に続いて暖かく穏やかな日となり、昼間には公園で花見をしながら昼食をとるサラリーマンの姿も多く見られましたが、私は花粉症に悩まされているので屋内で食事をとることにしました。」
この文は、「知的文章術」(著:外山滋比古)の中で、悪文として紹介していた例を僕なりにアレンジしたものです。書いてある内容は平易ですから、理解はできなくもないけど、何となくごたごたした文ですね。
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以下、この文を題材に、一文が長い文章の原因と対策を見ていきましょう。
2 「~が、」のつかい過ぎ
「~が、」を使うと、いくらでも文を長くできてしまいます。上の例でも2回使っていますね。一つの文で「~が、」が2回以上出てくるなら、使い過ぎを疑った方がいいです。
「~が、」を多用すると、脈絡のない冗長なイメージを与えてしまうので、文章がすっきりしません。よく幼児が「そんでね~、あのね~、」という話し方をすることがありますが、それに近い印象を与えてしまいます。
文章を書いていて「~が、」を使いたくなったら、ここでいったん文を切れないか疑ってみましょう。僕自身、「~が、」は一文に2回以上は使わないように心掛けています。
3 主語・述語をあいまいに考えている
「誰(何)が、どうした」というメッセージをあいまいに考えている文章は、やはり読みにくいです。主語・述語があいまいだと、無意識のうちに一つの文に情報を詰め込み過ぎてしまい、一文が長くなる傾向にあります。
上記の例をみてみると・・
① 今日は桜の開花宣言が出た。
② 関東地方は、全般に温かく穏やかな日だった。
③ サラリーマンは、公園で花見をしながら昼食をとっていた。
④ 私は花粉症なので、屋内で食事をした。
これだけの情報を一文に詰め込んでいるため、骨格となる情報がぼやけてしまっています。
対策としては、「この文では、この情報を伝えよう」ということを常に意識することです。そうすると自然に主語と述語が明確になり、間接的に一文が長くなることを防ぐことができます。
もっとも、主語・述語ごとにすべて一文で区切るのは、ちょっとやりすぎです。上記の①~④をすべて「。」で区切ったら、ブツブツした文章になるので、そこまでやる必要はありません。僕の場合は、実際に自分の文章を再読してみて、リズムに違和感がない程度で区切っています。
4 修飾語が多すぎる
これ、僕の文章の欠点です(笑)。
文章を書くときに、ゴタゴタと飾った表現を使ってしまうんですね。状況を詳しく説明しようとしたり、印象深い表現にするためにやりがちなんですが、後で読み返すと余計なことばであることが多いです。
上記の例でも、「公園で花見をしながら昼食をとるサラリーマン」のように、サラリーマンの修飾語が多すぎてちょっとくどいです。こういうことをやると、主語が長くなって頭でっかちな文章になってしまいます。
これについては、前述の外山先生の著書「知的文章術」に良い対処法があります。
つまり、動詞をできるだけ先に出すということ。
こうすることで「誰(何)がどうした。」というメッセージを早い段階で示すことができ、2の対策にもなります。
サラリーマンについて書いた例文についても、できるだけ動詞を先に出してやると全体がすっきりします。たとえば・・
「昼間の公園には、サラリーマンの姿が多く見られます。彼らは花見をしながら昼食をとっていました。」
特に現代人は、印象的な文章を狙うために修飾語が多くなりがちです。
余程書き慣れた人ならともかく、凡人が読みやすい文章を目指すなら、外山先生の仰るように動詞を先に出した方が効果的ですね。
5 まとめ
以上を総合すると、今回の例文は以下のように直すことができます。
「今日は桜の開花宣言が出されました。関東地方は全般に昨日に続いて暖かく穏やかな日となり、昼間の公園には、サラリーマンの姿が多く見られます。彼らは花見をしながら昼食をとっていましたが、私は花粉症に悩まされているので、屋内で食事をとることにしました。」
どうでしょう?
ツッコミどころはあるでしょうが、それでもいくらかマシになったのでは?
この視点で見ると、僕の記事の文章もかなり直さなくてはいけないようですね(汗)。
それでは、また。