こくごな生活

国語や法律のソフトな考察を中心とした日常雑記録

作文採点者が考える文章に若者言葉を使うべきではない理由

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こんにちは。

 

今回は、作文問題などの公式の文章で若者言葉を使うのがなぜいけないかについて述べてみます。

 

若者言葉はラフな表現が多く、そもそも硬い文章と雰囲気が合わないので、感覚的に使ってはまずいというところまでは分かります。

しかし国語を教えている立場からすると、もう少し国語っぽい説明の仕方が欲しいところなので、作部採点者の立場からそのあたりの答えを考えてみましょう。

 

 

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1 作文・記述採点者から見た若者言葉の印象

僕は中学生の作文採点をすることが多いのですが、そのとき若者言葉がみつかると、まず困惑します。

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「ハブる」?

「ブッチ」?

 

僕はここ数年、講師業をやらなくなったせいで生徒と接触する機会が減り、若者の最前線の言葉についていけなくなってきてます。

僕などはまだいい方で、年配の採点者になるとチンプンカンプンなようです。

 

採点者はこういった言葉があるということを知っておかないと、単なる誤字なのか、はたまた不適切な表現なのかの区別がつかなくなるので、若者言葉辞典などで勉強しなくてはなりません。

その意味で採点者も若者言葉に全く無関心というわけではないんです。

 

こういう若者言葉が出てくると、「これは減点すべきか?」という点がよく話題になります。国語の教育者としてはあまりにもラフな表現は放置したくはないところですが、厳しく減点しすぎると平均点が下がりすぎてしまうので、バランスが難しいところです。

 

ちなみに僕の印象では、都市圏の学校では若者言葉に寛容で、地方では厳しめ、という印象です。このへんに各自治体の教育方針が見え隠れしているようで興味深いですね。

 

2 知的文章術(著:外山滋比古)に見る若者言葉の欠点

しかし、そもそもこのような若者言葉がなぜ減点対象なのでしょうか?

 

「真面目な文章でそんなふざけた言葉を使うのはダメに決まってるだろう」

と思われるかもしれませんが、若者言葉だから乱れたものでけしからん、というのはよくよく考えると十分な論証になっていません。

 

もちろん人を傷つけるような言葉は論外。

しかし新しい言葉というだけでなぜ真面目な文章で使えないのかについては、もうすこし説得力がある理由が欲しいところです。仮にも作文の減点事由ですからね。

 

そんな疑問を解消するヒントになるのが、外山滋比古先生の本です。

 

 知的文章術

 国語界では言わずと知れた大先生の御著です。

 

外山先生は本の中で、若者用語のような新しい言葉で文章を書くことを、「生木で家を建てるようなもの」と評しています。

生木は時間が経つと歪んだり曲がったりするが、若者言葉にもその性質があるということです。

 

3 作文に若者言葉を使うのは折詰弁当にナマモノをいれるようなもの

外山先生の本を読むと、作文などの公式文章で若者言葉を使ってはいけない理由が分かってきます。

 

外山先生の表現を僕なりに解釈すると

  • 真面目な文章は家のようなもので「使い捨て」ではない
  • つまり後々読まれることも想定しなくてはいけない
  • したがって未来の人間が読んでも違和感のない表現でなくてはならない

ということではないでしょうか。

 

たとえば今どき「ナウい」なんて言葉を使ったら、古臭く感じますよね。

これは「ナウい」という言葉が生木であり、現代においては既に歪んでしまった言葉だからです。

つまり、こんな日持ちをしない言葉を真面目な文章で使うのは、折詰にナマモノを入れるようなものだと考えれば、若者言葉が不適切であることのきれいな説明になります。

 

これは作文問題にしてもあてはまります。

作文は公式文章であり、この先の時代の人間が読んでも違和感のない表現にしなくてはいけません。ナマモノのようにすぐダメになってしまう言葉を使うのは、その表現作法に反しているから間違いということになるわけです。

 

4 まとめ

以上、作文問題などの公式文章に若者言葉を使っていけない理由を外山先生の本を参考に考えてみました。

 

今回の解答のいいところは、「本来の美しい日本語を乱して怪しからん」といった保守的な上から目線ではない点です。

もちろん僕も乱れた言葉がいいとは思いませんが、こういう説明をし過ぎると、言葉を教えている人間が権威主義的で嫌な奴に見えてしまう危険があります。それが理由で国語の世界に反感を持つ人が増えてしまっては、国語を教える者としては悲しいですからね。

 

その点、外山先生の説をベースに考えると、そのような精神主義的なものではなく、簡潔で説得力があります。さすが国語界の巨匠ですね。敬服しました。

 

これで作文で若者言葉を発見した我々採点者も、納得して減点できるというものです(笑)。

 

それでは、また。

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