こくごな生活

国語講師だったひとのつぶやき集

1万通の作文を読むと分かる「漢字の間違え方」から学ぶ 漢字の学習法

こんにちは、ご訪問ありがとうございます。

 

以前にも述べたことがあるんですが、僕は中学生の作文を採点する機会が多いです。好きでやっている仕事ではありますが、メインの仕事の傍ら年間1万通を超える文章を見るのは、正直ラクではない(笑)。

 

それだけの分量の作文を読んでいくと、もちろん多くの漢字の間違いを目にすることになるんですが、そこで分かることは、大体漢字の間違え方というのはパターンがあるということなんですね。

 

今回は、そんな漢字の間違え方のパターンを分析することで、漢字の学習法について検討してみることにしましょう。

 

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1 こんな漢字の間違いが多い

以前、中学生が間違えやすい漢字を具体的に10ほど挙げて記事にしたことがあります。それが、これ。

 

bigwestern.hatenablog.com

 

今回はさらに、その間違え方を一般的にグルーピングしてみたいと思います。

 

① 形が似ている漢字と混同する

漢字の間違いの典型といえるでしょう。

具体的には、このような間違いが多いです。

 

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間違えてますよね?

いや、もう作文を読んでいると圧倒的にこの字を書く子が多い。間違いの方が多いくらいなので、添削している自分の理解の方が間違えているんじゃないか、と不安になってしまいます。

 

ちなみに正解はこちらですね。

 

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何故このような間違えをしてしまうのかというと、単純に「壁」と「璧」の形が似ているからでしょう。そして日常では「璧」という字などほとんど書かないから、日ごろ見慣れている「壁」という字に引っ張られてしまうわけ。

 

このように似ている字がある場合、自分が親しんでいる字をあてこんでしまうケースが多いです。

 

② 同じ読みをする漢字と混同する

これも多いです。代表的なものとしては以下のようなものが挙げられます。

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これ、大人でもよく間違えています。

僕の場合、作文でこの字が出てきたら真っ先に目がいってしまいます。受験生の母集団にもよりますが、ひどいときには7~8割ほど間違えています。

 

もちろん正解はこちらですね。

 

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「ケツ」という音をきくと、「決定」などの字を連想するので、「不可決」と書いてしまうんでしょう。さらには、例えば「満場一致で『可決』した」などという例があるので、ますまず誤解に拍車がかかってしまうのかもしれません。

 

③ 漢字の作り自体を間違えて記憶している

①や②の間違いは、熟語に関するものが多いですが、単漢レベルでも間違いが多発するものがあります。代表的なものは、これ。

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羊の部分の横棒を2本にしてしまう間違いが圧倒的に多いです

以前の記事でも紹介しましたが、重複を恐れずに再び取り上げます。それだけ間違えている人が多いです。やはり「幸」という字があるので、それに引っ張られて間違えてしまうのでしょう。

 

2 こういう間違いを防止するには?

① 熟語とセットでその漢字を「理解」する

熟語とセットで理解すると、その漢字の意味を知ることができますから、似たような漢字と混同することが少なくなります。

 

例えば、こんな問題。

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これも間違いが多い漢字の一つですが、正解はこちらですね。

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ちなみにどんな間違いが多いかというと、こんな間違いです。

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形が似ているので間違えてしまうんでしょう。

しかし「殖」が使われている熟語を思い浮かべれば「養殖」など、ものをふやすイメージのある漢字だとわかります。肝臓を移して数が増えたら怖いですよね。

 

このように熟語から漢字の意味を理解しておけば、感覚的にその漢字を使うことに違和感を覚えますので、間違えた感じを使うことが少なくなります。

 

ちなみに「移殖」という熟語自体は間違いではないですよ?

Wordで入力するとしっかり変換候補に上がります。

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この場合の「移殖」というのは、水産業の分野において、「従来そこにいなかったり,あるいは少なくなってしまった魚介類を他の水域から移して成長・繁殖させること」です(世界大百科事典第2版)。

 

これは魚などの「数を増やす」という意味と関連しますから、「殖」を使うべきということになります。僕の場合、作文採点のときに「移殖」となっているからといって軽はずみに減点できないんですね。怖いもんです。

 

② 漢字の訓読みをみてみる

漢字をよく間違える人は、漢字の音読みしか意識していない場合が多いです。

漢字の学習の際に、訓読みを意識すると感じそのものの意味を理解することができるので、他の文字と混同することが少なくなります。

 

例えば、先に挙げた「移植」の例でいうと、「植」の訓読みは「う(える)」です。これを知っておくと、ちょうど植物を「うえる」ように、肝臓を他の場所に移し変える動作が連想できるわけです。

 

これに対して、「殖」の訓読みは「ふ(やす)」です。文字通り「数を増やす」ことですね。①で述べたときと同様、肝臓がどんどん増えていくイメージを持てば、「そんな漢字を使うのは、おかしい」と感覚的に納得できるはずです。

 

 

 ③ 漢字の成り立ちをみてみる

1の例で挙げた「達」の間違いを防止するには、熟語や訓読みを理解するだけでは難しいです。漢字の「かたち」に関する誤解ですからね。

 

このような場合、漢字の成り立ち・起源などを知り、その漢字について「へぇ~」という経験を持っておけば間違えにくくなります。

 

ちなみに「達」の成り立ちを調べてみました。

以下のサイトなどに載っています。

このページによると、やはり「達」という字は「羊」が関係しているようです。

この漢字の「つくり」の部分は、もともと羊の後ろ姿をイメージした「大」と「羊」を組み合わせたものだったとか。

 

このような理解があれば、「幸」という字をあてるという間違いは減りそうですね。

 

 

3 漢和辞典を引くこと

2で述べたこと全体にいえることは、漢字の仕組みと成り立ちを理解すれば漢字の間違いが減るということです。

 

漢字の問題で間違えたとき、あるいは「この漢字は間違えそうだな」と思ったら、横着せずにちょっと漢和辞典で該当する漢字を調べてみてください。その漢字について新たな発見があったりして、無味乾燥になりがちな漢字の勉強が少し楽しくなります。

 

1であげた「完璧」の「璧」の字も、漢和辞典で調べると、もともとは中国で王様に捧げる祭器のことを指すことが分かります。寸分の狂いもない祭器を完成させることから「完璧」という言葉が連想できるわけです。

 

ちなみに僕も、以前に「夥伴をなす」という字がどうしても分からなかったので、漢和辞典のお世話になったことがあります。夥伴とは「グループ」「仲間」のこと。

 

漢和辞典で「夥」の字を引くと、「夥(おびただ)しい」という訓読みをすることができます。これで「夥しい」という漢字も知ることができてトリビアが増えます。

そして「夥しい」とはその作りから分かるように、木の実などがわんさかあるように数が多い様を表します。そんな数が多い人間が「伴っている」様子が、グループを表す「夥伴」という言葉になったのでしょう。

 

4 まとめ

以上をまとめると、漢字を勉強する際は

意味の間違い ⇒ 熟語や訓読みでその漢字そのものの意味を「理解」する

つくりのまちがい ⇒ 漢字の成り立ちを知る

ことがポイントになります。

 

そしてその際に有益なツールになるのは、漢和辞典

一般的に、普段滅多にひくことのない辞典ですが、気がついたときに引く習慣をつければ、漢字力はぐっと上がります。今はスマホで気軽に検索できる時代なんですから、積極的に使うべきでしょう。

 

漢字の勉強というと、小さいころに練習帳に延々と書き取りをしていたせいか、どうしても「書いて覚えるもの」という印象が強く残りがちです。しかも大きくなると漢字の勉強などに時間を割けないから、そんな幼少期の学習イメージが払しょくできないまま「漢字の勉強なんてやってられない」と思う人も少なくないのです。

 

確かに、漢字そのものを机に向かって「根詰めて」勉強する必要はありませんが、気がついたときにこまめに漢字を「理解」するという作業は、国語講師として強くお勧めします。

 

それでは、また。