こくごな生活

国語や法律のソフトな考察を中心とした日常雑記録

平成28年度東京都立高校入試の作文問題の解説

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前回、平成29年度東京都立高校入試の作文問題を検討してみました。

 

1度だけでは作文問題のアプローチについてなかなかイメージが湧かないと思いますので、今回は1年遡って平成28年度の問題を検討してみましょう。

 

問題はこちら

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2016/pr160224a/28k-toi.pdf

 

さて、今回のテーマは「基本を身につけること」です。

では、作者はこのことについてどう考えているのでしょうか。

 

前回も述べましたが、東京都の問題は本文の最終段落に作者の言いたいことが述べられていることが多いです。最終段落でそれらしきものを探してみると、「その美術が本来持つ造形美の根源を感じさせなければ、真の進歩、その分野の新しい美は得られない」という部分でしょうね。これがキーセンテンス(大事なところ)といえるでしょう。

 

勘の鋭い人はこれだけでも書くべきものにピンとくるかもしれません。その思考プロセスはこんな感じではないでしょうか。

まず、このキーセンテンスが「「基本を身につけること」とどう関係しているのかをみてみます。すると、「本来持つ造形美の根源」=基本であり、それを感じさせなければ真の新しい美は生まれないといっていますね。つまり、筆者は、基本を大事にしなければ本当の新しいものは生まれないぞ、ということが言いたいわけです。時間のないときは、これだけを材料に作文を書き進めても大けがはしないはずです。

 

しかし、今回のキーセンテンスが、「基本を身につけること」とどう関係しているのかは、やはり最終段落だけではわかりにくいですよね。テーマからずれた答案を書かないためにも、やはり本文の全体像を見ておきましょう。

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文字は単なる実用手段ではなく、芸術作品だ(第1~3段落)

   ↓

芸術作品と認められるには、文字そのものに造形美が必要で、造形美とは~という内容だ(第4~6段落)

   ↓

造形美を知るには古典を知ることが大事→古典に基づいた本来の造形美を疎かにすると新しいものを作るのは難しい(第7~最後)

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つまり筆者は、①書の芸術性を例にとって、②書の芸術性の中身を述べ、③その芸術性を獲得する手段として、古典すなわち「本来持つ造形美の根源」を大事にするべきだ、といっているわけです。古典とは設問でいう「基本」のことですから、基本を大事にしないといけないよ、というのが筆者の言いたいことだとわかるわけです。

 

では、この基本が大事という内容をもとに作文を書いていきましょう。

ここで、どういう体験がよいか、で悩むかもしれません。個人的には本文の内容に近い具体例・体験で述べた方が、本文のキーワードをうまく利用でき、テーマからずれにくいと思います。本文では書の芸術作品を例にとっていますので、書道の体験がある人は、書道の基本を大事が大事だと感じるような内容を書けばいいと思います。東京都の参考答案もそんな内容ですね。

ただ、古典を大事にする芸術作品は何も「書」だけではありませんから、他の芸術作品を例にして答案を書いても構わないと思います。その例がこんな感じです。

 

(参考答案)

 僕は、美術の時間に、テレビで見た現代美術作品を真似して抽象的な絵を書きました。しかし先生からその絵の良さを理解してもらえず、訳が分からないといわれてしまいました。

 これは、絵画の本来の造形美を理解しないまま自分勝手な表現をしたことが原因だと思います。新しいことをしようとしても、基本となる考えをしっかり理解しなければ、評価されることは難しいので、絵画に限らず、基本を大事にすることは大事だと思います。

 

 

 

 

 

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