司法試験受験経験者が語る「漫画で分かる」系の参考書の注意点
こんにちは。
僕はこれまで司法試験・行政書士などの国家試験をはじめ、比較的多くの試験を受けてきました。
結果的には司法試験は失敗し行政書士には合格ということで、「この業界」では凡人以下のレベルではありますが、平均的な人間よりは参考書と名の付くものを買い求めてきました。
さて、受験の種類を問わず参考書には様々なものがありますが、特に初学者の場合は「漫画で分かる」系のものに魅力を感じる人も多いことでしょう。
しかし参考書が漫画になると本当に分かりやすいのか?
今回は、今まで参考書を買い続けて、仕事でも学参編集を続けてきた自分の経験を踏まえ、漫画で分かる参考書を使用ことに関する注意点を掘り下げてみることにしましょう。
これから漫画系の参考書を購入しようと思っている受験生に参考になればと思います。
1 司法試験受験では漫画が役に立ったことはない・・
僕が司法試験合格を目指して法律の参考書を買い求めていたとき、漫画系の参考書で役に立った記憶がありません。
当時は法律学について全くの素人。
簡単な法律概念を手っ取り早く仕入れるための手段を模索していた僕は、
「画が多くてイメージがもちやすいので、法律の概念を理解するために役立つ」
と思い、「漫画で分かる~」と銘打った参考書を数冊手にしたことはあるのですが、いずれも自分にはピンときませんでした。
もちろん僕が優れた参考書に出会わなかっただけかもしれません。
しかし、あれから思い返してみると漫画系参考書特有の「落とし穴」があった気がします。
2 本当に必要な情報を画にしているか?
漫画がなぜわかりやすいのかというと、画の形で情報が入ってくるので必要な概念のイメージがもちやすいからです。
例えば子供時代に漫画で分かる歴史物語を読んだ人も多いと思いますが、あれは各時代の出来事を画の形で表しているので、当時の状況を想像しながら理解できるから楽しめたわけ。
しかし逆に言うと、読者が必要としていない情報を画にしているだけの参考書は、たとえマンガであっても大して役に立たないです。
よくあるのが、オフィスや大学の教室で若い男女が会話しているだけのやつ。
たとえば「誰でもわかる漫画版:会社法」みたいな本があったとして・・
新株予約権付き社債というのは一定条件でその会社の株式に転換できる権利のついた社債のことなんだ。CBともいわれるけどね。
株価の値上がり益を見込める時には、会社にとって有用な資金調達手段になるわね。
この説明だけでCBの何たるかが分かる学部生がどれだけいるでしょうかね?
もしわかるというなら、マンガじゃなくちゃんとした専門書を読むことをお勧めします。少なくとも当時の僕がこんなマンガを読んでも「はあ・・」くらいにしか思わない。
結局、こういう本は日常会話の画の中に専門用語を貼り付けているだけなんです。
セリフ内容を画で説明しきれていないから、単に専門書の切り張りを読んでいるのと同じ効果しか得られない。
これだったらフジテレビの支配権を握ろうとCBを駆使したホリエモンの小説でも読んだ方が、まだ新株予約権付社債のイメージが湧くんじゃないでしょうかね。
これは漫画系の参考書を作っている人に文句を言っているのではありません。
会社法などの体型的な学問を一冊の薄い漫画でまとめるなら、どうしても当り障りのない概念的な説明で終わらせざるを得ない。いちいちそれにまつわる物語を描いていたらとても一冊でまとまりませんからね。
しかもヘンにかみ砕いた説明を多用すると、校閲担当から「この表現、ウラはあるの?」みたいなツッコミがあるので、結局教科書の硬い表現をそのまま使わなくてはならないなんてこともあるわけです。
そう考えると、体系的な学問を一冊の漫画で理解しようというのは、かなり無謀なことであると読者の側も認識した方が良いかと思います。
3 漫画系の参考書はあくまで雰囲気を味わう程度に
以上、漫画系の参考書について僕なりの注意点を簡単に述べてみました。
もちろんこのタイプの本でも本当に役に立つものがあるかもしれないので、購入自体を否定するつもりはありませんが、もしも漫画系の参考書をお探しであれば
・自分に必要な情報が分かりやすく画になっているかを可能な限り試読する
・そもそも目から鱗が落ちるような理解を漫画から求め過ぎない
ことが肝要かと思われます。
特に本格的な体系学をはじめて行う学生が、このようなマンガに期待をし過ぎるのは失敗のもとです。
以前にも申し上げた通り、こういう学生に不足しているのは専門用語の概念的な知識だけではなく、それが運用される現実の経験ですから、それを一冊の漫画で補うのは困難です。
例えば法律学の場合、
そんな一つ一つの日常の積み重ねが、自称「わかりやすい」参考書よりも何倍も有益だったりします。
結局、活字だけではピンとこない僕みたいな凡人が体系的な学問を習得するなら、日常生活での地道な努力と経験が必要なんですよ。
学生時代の僕への説教みたいになってきたところで、この記事を締めたいと思います。
それでは、また。